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【感想と深読み】白い犬とワルツを/テリー・ケイ|大人の童話

3.03.2025

文学1

白い大型犬が笑っている

ミリオンセラーになった名作小説。愛妻に先立たれ、子供や孫たちに囲まれて余生を過ごす老人サム。彼の前に現われた1匹の白い犬との交流を描いている。世代を超えて愛される大人のメルヘン。

『白い犬とワルツを』書籍情報


カテゴリとジャンル:〈文学1〉日本の文芸作品

タイトル:白い犬とワルツを
作  者:テリー・ケイ(Terry Kay)
小説家。アメリカ出身。1938年〜2020年。
絵本化されたり、この作品を基にドラマ化や映画化されるなど、大ベストセラーとなった。


 簡単なあらすじ 

妻と死別した老人サムが、一匹の白い犬と余生を過ごす物語。
著者テリー・ケイさんののご両親をモデルにして創作されたそうだ。

読書難易度:
簡単。とても読みやすい名作だと思った。

感想・レビュー・考察

テリー・ケイさんの『白い犬とワルツを』は、以前、世間で凄く流行って、映画化もされた名作小説ってことは知っていたんですが、私は最近になって初読。

ご存知のように、世の中には《愛》というテキストが辟易するほど溢れかえっている。

個人的には、ありきたりな男女のラブストーリーとか、何でもかんでも《愛》に帰結させてみせるだけの薄っぺらい説教系や啓発系って、もぅお腹いっぱいで、あまり食指が動かないんですよね😅
きっとこのブログでは、そっち系統の作品のレビュー記事って、今までもこれからも極めて少ないでしょう(笑)。

実は『白い犬とワルツを』も、ありきたりなラブストーリーだろうと思って、今まで手にしなかったんですよ。
でも気まぐれで読んでみた。とりあえず犬や猫は大好きなので。

さて感想ですが…

良いものを読んだ!
さすがミリオンセラーになっただけのことはあった!名作だったよ。うん、読んで良かった👍

この『白い犬とワルツを』は、妻と死別した老人サムが、ある日、白い犬と出会い、やがてその犬を亡くなった妻のコウラだと思うようになる。
そして老人サムが白い犬と寄り添って余生を過ごし、亡くなるまでの物語だ。

これといって大きな盛り上がりは無く、淡々と話が進んでいく。
そこに描かれているのは、最愛の妻に旅立たれた喪失感、老いと余生、病の苦しみ、親を想い心配する子供達、夫婦愛、家族愛、そして死。

なかなかヘビーなことが盛り込まれていましたが、登場人物達は誰もが思いやりに満ちていて優しいので、読んでいても重苦しくなることはない。
切なさはあるけれど、穏やかで心温まるストーリーだった。
どちらかといえば女性ウケしそうな物語ですね。

【POINT1】二人の思い出の場所 

サムが歩行器を使って犬とワルツを踊る場面は、とても感動的でグッとくるものがあった。

でももう一つ素敵なシーンがあるんだな。
サムが同窓会に出席する為にトラックで向かったのかと思ったら、奥さんにプロポーズした思い出の場所へ行くんですね。このエピソードも素敵だった。

きっと心の中では、コウラと二人で仲良く出かけたんだろう。そして思い出の場所で寄り添いながら語り合い、愛に満ちた楽しい一時を過ごしていたのだろう。

コウラは、サムにとても愛されていたんだなぁ。

【POINT2】白い犬 

さて、白い犬の正体は、幻だったのか?幽霊だったのか?亡くなったサムの妻コウラの化身だったのか?という疑問が残る。どう思います?

読んだ印象としては、テリー・ケイさん的には、サムとコウラの夫婦愛が奇跡を生み出し、死者と生者の心と心が繋がって、 優しくて非現実的ナニカを具現させた設定だったのかな、って感じがするけども。
「でもそのへんは一人ひとり自由に思い描いてね!」って考えから、読者のお楽しみポイントとして少しばかり曖昧な表現にしたんじゃないかな。

私流の解釈ですが、白い犬の真偽はどうでもいいんじゃないかと思うんだ。
きっとサムは、白い犬を見たというよりも、むしろ白い犬が観えたのではないかなと思う。

サムの心の目は白い犬を認識して、その犬にコウラを感じた。サムの心は白い犬の正体がコウラだと確信した。だからコウラが逢いに来てくれたという実感を得た。
それを己の真としたわけだ。
たとえ白い犬が実存してもしなくても、他の人に白い犬が見えても見えなくても、その犬の正体がコウラであってもなくても、サムの真は揺らがない。

サムは、己の真実だけで十分幸せだったんだと思う。

だってサムは、夢でもいいから、幻でもいいから、愛するコウラにもう一度逢いたいと願っていたのだろうから。
だからサムにとって白い犬と過ごした時間は、かけがえのないものになったのだ。

私はこう思う

自分自身の観念でしかないけども、私はこう思う。

先に旅立っていった者は
かつての生を知る人の心に うつる。
想いを寄せてくれる人の心に うつる。

目には見えなくとも うつる。
人であれ、ペットであれ うつる。

その心が珠であるならば。

俗に言う「故人が心の中に生きている」って、きっとそういうことなんだろう。
大切な人や、大切なペットを失った経験がある人ならきっと分かるでしょう。

もっというと、人の想いは心に《うつる》。そして心は観たいものしか観ないし、その目は見たいものしか見ない。そういうもんなんだと思う。

故に他の人にも白い犬が観えるようになった。父の真実を理解してあげたいとか、彼らにも《うつる》想いが心が生じたとか、何か心の変化があったんだろうよ。と解釈したし、他の人にも白い犬が観えたエピソードには、とても共感できた。

〈絵本版〉原作:テリー・ケイ、文:三木卓、作画:YUJI 詩人で児童文学者の三木卓さんがリライトした絵本版。こちらも素敵ですよ。

まとめ

さて今回は、テリー・ケイさんのベストセラー小説『白い犬とワルツを』のレビューでした。

きっとサムもコウラも愛に包まれて幸せな人生を送ったんでしょう。
そしてこれを読んだ人は、自分も白い犬が見えるような生涯を送りたいなと思うんじゃないでしょうか。私もその一人でしたね😊

流行りもので忘れられてしまうのは、もったいない作品だ。とても美しい物語だったよ✨
いつかまた再読したいと思う。

ほんと良いお話なので、もしまだ未読の方がいらっしゃったら、気が向いたときにでも一度手にとってみてくださいね。

 映画版(邦画) 

監督:月野木隆さん、主演:仲代達矢さんの邦画版。
ちょっと好みが分かれそうな作品になっています。たとえば在日韓国人問題の風刺(?)をチラッとねじ込んでいるので、人によっては不快かもしれません。

Thank you!
では、またね😊


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