国民的詩人・谷川俊太郎さんの『二十億光年の孤独』は、18歳頃に書かれたもので、詩人としての原点とも言える作品。デビュー作の詩集に収録されている。
『二十億光年の孤独』書籍情報
タイトル:二十億光年の孤独
作 者:谷川俊太郎(たにかわしゅんたろう)
詩人、翻訳家、絵本作家、脚本家。東京都出身。1931年〜2024年。
1975年日本翻訳文化賞、1988年野間児童文芸賞、1993年萩原朔太郎賞を受賞。ほか受賞多数。
簡単な内容紹介
1949年冬から1951年春頃までの作品。
自由詩。広大な宇宙の中の、小さな星・地球に住んでいる人類の孤独、宇宙に馳せる想いを詩にして綴っている。
本書では、表題作以外の詩や、解説やエッセイも書かれている。
読書難易度:
内容は案外深いが、文章は平易でとても読みやすい。
感想・レビュー
国民的な詩人・谷川俊太郎さん。
彼は戦後から現代にかけての日本を代表する偉大な詩人だった。2024年に老衰のために死去。享年92歳。
裕福な家に生まれ、その才能は早くから世の中に評価されて、好きなことをしながら豊かに暮らせて、明るい人生を歩み、長生きして、静かに旅立っていかれたのでしょう。
寿命に不足は無く、幸せにも不足は無かったんじゃないかな。
谷川俊太郎さんといえば、小学校と中学校の国語教科書に詩や物語が掲載されたので、日本の学生さんにとっては、一番よく知っている詩人ではないかと思う。
そういえば国民的アニメと言われていた『鉄腕アトム』のオープニング曲の作詞もされていましたね。平易で耳にも心にも優しくて良き歌詞だと思う。
さて本書の話
なんて静謐で、壮大で、素敵な詩なんだろう。
一見すると若者の感性だけで書かれた印象だけれど、よく読むとある程度人生経験を積まないと思いつかないような詩でもある。
これが70年以上前に、10代の若者が作った詩だという。谷川俊太郎さんの秀でた才能と感性に驚いてしまう。
若い頃の谷川さんって、精神年齢が高かったんでしょうかね。
デビューの経緯は、谷川俊太郎さんが、書きためていた詩のノートを、父の谷川徹三さん(哲学者で法政大学総長)に見せた。
そして父・谷川徹三さんは、そのノートを三好達治さん(詩人で翻訳家)に見せたら『文学界』に紹介してくれた。
そして谷川俊太郎さんの詩が世に出たという。
そういった縁があって『二十億光年の孤独』の序文も、三好達治さんが書いたのでしょう。
それにしても父ちゃんも、我が子の底知れぬ詩的才能にさぞかし驚かれたでしょうな。
三好さんもビックリでしょうね、きっと。
【POINT1】言の葉に生命を
作品については、勿論どれも素晴らしい。ただ詩の中にもう一歩踏み込んで理解しようと思うと、ちょっと意味が解りにくいところも有る。
案外深いことが書かれているんだよね。
なのに言葉が平易なせいか、不思議なくらいスムーズに読み進めていける。きっと表現力の凄さのなせる技でしょう。無駄な贅肉を削ぎ落とした言葉だ。
そして言の葉に生命を吹き込める人でもあったと思う✨
【POINT2】孤独とユーモア
私は、表題作になっている『二十億光年の孤独』が一番心惹かれる作品だった。
教科書にも掲載され、合唱曲の歌詞にもなっている名作だ。
一人の若者が宇宙と向き合い、無限の宇宙の中に流れる悠久の時に想いを馳せ、孤独な火星人に想いを馳せ、人類の孤独と、己の孤独な心と未来を見つめて、言葉を綴っている。
これがスーッと心にしみこんでくるだなぁ。
けして明るい詩ではないけれど、絶望とは違う。そこにちょっとしたユーモアさえ漂わせている。
【POINT3】ネリリ、キリリ、ハララ
この言葉のセンス良さよ。天才だ👍
未知の世界の言語の、動詞を想像されたのだろうが、まるで広大な宇宙の片隅で奏でられているさざ波のようではないか。
その音色に心の耳を澄まして表現したかのよう。
なんで二十億光年?
詩のタイトルがめっちゃカッコ良いんだけど、なんで二十億光年?って不思議に思いませんか?
気になったので調べてみた。
どうやら『二十億光年の孤独』を執筆された当時(75年くらい前)は、宇宙の大きさがそのくらいだと考えられていたっぽいですね。
ちなみに現在は、
観測可能な宇宙
可視宇宙は直径約28ギガパーセク(約930億光年)の球体だということになる。宇宙空間はだいたいユークリッド平面である
うむ、推測値ってことか。推測した人も凄いな。壮大すぎて想像もできんわい。
谷川俊太郎さんの詩の話に戻ろう。
この詩を執筆当時、二十億光年の宇宙の果てまで孤独だと想像していたんでしょう。
そして地球人としての孤独なら実感しているけども、宇宙はあまりに広大過ぎて、小さな地球にいる自分達はさらに小さすぎて、宇宙全体の孤独までは実感できずにいる。
二十億光年分という途方もない孤独を知らずにいることって、ある意味幸せかもしれないね。
Amazon・二十億光年の孤独 / 谷川俊太郎
まとめ
今回は谷川俊太郎さんの自由詩『二十億光年の孤独』についての感想でした。
夜空に煌めく星々の装丁も素敵。詩集のイメージにピッタリだと思う。
谷川俊太郎さんの詩も、夜空で静かに煌めく星々のように美しかった。
どことなく、そこにいない孤独な誰かに心で語りかけているかのような詩だとも思った。
何の予定も入っていない休日とか、ゆったりした時間の中で、のんびりと美味しいコーヒーでも飲みながら読みたい本だと思った。何度でも再読できる詩集でしたよ。
あなたも、心に染みてくるような美しい詩に触れてみませんか?
これも素敵なんですよ。美しいイラストと名言集のような詩。どこからでも読めて心がほっこりする。めっちゃ癒される一冊ですよ。
『二十億光年の孤独』の記事は、全二回シリーズになっております。第二回の記事については、私なりにこの詩をもう一歩踏み込んで解釈してみました。
なお、私はただの読書好き。文学の専門家ではありません。万人共通の正解も存在しませんので、こういう解釈をした読者もいるんだな、程度に考えてもらえればありがたいです。それでもよろしければ、読んでみてくださいませ。
『二十億光年の孤独』の記事は、こちらでも紹介しています。