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【第二回・深読み】二十億光年の孤独/谷川俊太郎|孤独を読み解く

3.18.2025

文学1

朽ちた橋がある夜の海辺。モノクロ

【第一回・感想】二十億光年の孤独/谷川俊太郎|国民的詩人の原点 の続きです。今回は、この詩で語られている孤独について自分なりに読み解いてみました。

孤独な心。私の解釈はこうだ

ではさっそく谷川俊太郎さんの詩『二十億光年の孤独』を、私なりに読み解いていきます。

 「僕」の視点 

宇宙全体の孤独の全ては実感できないけども、「僕」には宇宙全体が孤独に観える。

詩の冒頭では、地球は人間から見たら大きいけど「小さな球」と言っているので、「僕」の視点も宇宙規模。
その視点からみれば地球は、広大な宇宙の片隅でぽつんと存在している孤独で小さな球に見えますな。

そんな孤独の中に浮かぶ小さな球の上で人間は、眠り、起きて、働くありふれた日常を生きている。
それを心のなかで俯瞰している感じじゃないでしょうか。

いやぁ、お若いのに達観しているというか、虚無感さえ漂いそうな詩人キャラだったんですな。かっこいい青少年だ(笑)

 火星人 

宇宙から見れば、火星もまた「小さな球」の一つでしかない。地球の近くにあるのに、火星には地球人の「僕」が知らない世界が広がっている。もし火星人がいたとしても、地球人の「僕」には何も分からない。

そういった前提で出てくる言葉が「ネリリ、キリリ、ハララ」。地球人の、眠り、起きて、働く、に対応した言葉でしょう。
つまり、ネリリ=寝る、キリリ=起きる、ハララ=働く、じゃないかな。
「僕」には知る由もないけれど、きっと彼らもまた同じようにありふれた日常を生きているのだろうって意味でしょうね。

 仲間を欲する火星人 

また仲間を欲しがっているのは確かだと言っている。「また」という言葉が入っているので、「僕」も孤独を抱えていることを示唆しているんですね。

火星人って、意味そのままであると同時に「他者(人間)」の メタファーでしょう。 火星って地球のすぐ外側の軌道を回っていますので、地球にとっては身近な星。でも火星には行ったことがないから、実はよく知らない星。

なのでもっというと火星人は、理解し合えない他者、近くて遠い存在である他者のメタファーといえるでしょう。

すぐそこにいるのに遠く感じる他者に囲まれて、孤独を感じて生きている「僕」がいる。

たとえば、一人で自由気ままに過ごす時の孤独なら、贅沢で心地良い。
けれど大勢の中にいるのに孤立して、周囲に見えない壁を感じてしまう時の孤独感って、とても居心地が悪くて、不安でたまらなくなるものだ。
他にも、身近な人から粗末にされていると気付いた時や、どんなに言葉を紡いでも解り合えない時、或いは誤解が解けないままの渦中にいる時の途方もない孤独感。
都会の喧騒の中で、むせ返るような人の気配に囲まれているにも関わらず、感じてしまう漠然とした孤独感っていうのもあるね。

そんな時ふと思う。人間って一人では生きていけないものだけど、心の奥底は独りなんだなぁって。

そういうのは生きてりゃ誰でも一度くらいは経験があるんじゃないかな?

己の中の孤独を見続けることは辛く、その孤独を癒すことは難しい。
寂しさを紛らわすのは容易いが、孤独はそう簡単には埋まらい。

多分、寂しさよりも、もっと深いところから感じるものだね、孤独って。
でもなぜだか小っ恥ずかしくて、人には言いにくい想いでもあるのよね😂(そう思うのは私だけだろうか?)。

それはともかく、きっと「僕」は人が本質的に有する孤独に気付いている者なんでしょう。僕だけでなく、他者も、火星人も、誰もが心の中に孤独を抱えていて、心が通い合う仲間を欲していることに気付いているから、それを「確か」だと確信しているのでしょう。

 万有引力と宇宙のひずみ 

万有引力
万有引力(ばんゆういんりょく、(英: universal gravitation)または万有引力の法則(ばんゆういんりょくのほうそく、(英: law of universal gravitation)とは、「この宇宙においては全ての質点(物体)は互いに gravitation(重力)・attraction (引力、引き寄せる作用)を及ぼしあっている」とする考え方、概念、法則のことである。

引用:Wikipedia/万有引力


一般相対性理論
アルベルト・アインシュタインが1915年から1916年に発表した物理学の理論

アイザック・ニュートンによって万有引力として説明された現象が、もはやニュートン力学的な意味での力ではなく、時空連続体の歪みとして説明される。

引用:Wikipedia/一般相対性理論

自然界の基本的な力として引き合う、そしてこの宇宙はひずんでいる。これを孤独ゆえに、引き合い、求め合う現象だと「僕」は、観念的に解釈しているんでしょう。あ、そのまんまですね😊

補足(余談かも)

リアルタイムで習っている学生さんの方が詳しいでしょうが、現代ですと、物体同士が引き合う力ではなくて、空間をゆがめる(縮める)力がある。その結果、空間をゆがめて引き寄せる。って言うんでしたっけ?(うろ覚え)
ま、細かいことは、いっか(笑)


 宇宙の膨張 

日本では戦後のベビーブームを迎え、人口が爆発的に増えていくのを、僕=谷川俊太郎さんは、リアルタイムで見ていたはずなんですよね。
それで当時の人口増加の様子を、宇宙の膨張とイメージを重ねたんだろうと思う。
人口が増えるに伴い、関係性の中で感じる孤独感も膨張していき、漠然とした不安が募っていく。まるで宇宙が膨張するように。

 くしゃみ 

壮大な宇宙目線で始まり、くしゃみで現実に引き戻されてしまった「僕」は、そこから再び現実の時が始まるんでしょう。

宇宙のミクロとマクロの対比が面白いね👍

孤独な心は寒いものだ。その寒さがリアルなら、くしゃみの一つも出るだろうよ。
つまりアレか?ビッグバンって、宇宙のくしゃみみたいなkもんなのか?😆
そんなことを思ってクスッ😊となった。

素敵な詩だね。

二千数百篇におよぶ全詩の中から、谷川俊太郎さん自身が厳選した173篇を収録した一冊です。こちらにも『二十億光年の孤独』が収録されていますよ。

あとがき

この『二十億光年の孤独』という詩は凄く共感できるんだなぁ。宇宙は孤独から始まった、として情緒的・観念的に世界見て、孤独を綴っているところが。凄く好きだ。

空虚な愛が飛び交う物悲しい界隈では「この宇宙の全ての本質は愛なのです。愛!」とか、言葉を覚えたインコ🐤のように《設定》と《愛》ばかり連呼される方って案外多いよね(足りないから補いたいのかもね、愛)。
ま、信仰は自由ですし、人それぞれなので、それはそれでいいと思いますが、私はちょっと共感できないんだなぁ。なぜなら

宇宙の根源が一つであり、
この世の全てはフラクタルであり、
人もその理の中にいる宇宙のカケラだとして…

もしもこの世の全てには、
愛がデフォルトで備わっているとするならば…

なぜ我々は根源から旅立ち、
分岐を繰り返し、枝葉を伸ばし続けて、
ありとあらゆる愛の実感を求めて経験し、
学び続ける必要があるんだろうね?

人類は高い知性を獲得したのに、
何千年もかけて愛について考えているのに、
なぜ未だに愛についての
人類共通の解が見いだせないんだろうね?

って思うので。
人が愛を知り、求め、引き合うのは、孤独という力じゃないの?

だから『二十億光年の孤独』に共感するの。
あくまでも個人的な情緒とか観念の話ですよ。

 関連書籍 
二十億光年の孤独』ではないですが、これも素敵なんですよ。スイスの画家パウル・クレーさんの絵画に、谷川俊太郎さんの詩『クレーの天使』が添えられた美しい絵本なんですよ。
Amazon〈クレーの絵本〉パウル・クレー、詩:谷川俊太郎

Thank you!
では、またね😊


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〈文学1〉日本の文芸作品・詩
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【第一回・感想】二十億光年の孤独/谷川俊太郎|国民的詩人の原点

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