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【感想】『百年シリーズ』三部作/森博嗣|幻想的SFミステリ

6.02.2025

文学1

森の中に佇む城。

森博嗣さんの『百年シリーズ』三部作は、ファンタジー強めの近未来SFミステリ小説。とても哲学的で、生と死の本質を読者に問いかけてくる壮大な物語です。

『百年シリーズ』書籍情報

カテゴリとジャンル:〈文学1〉日本の文芸作品・SF小説

〈小説版〉
作  者:森博嗣(もりひろし)
工学博士、小説家、随筆家、同人作家。愛知県出身。1957年〜。
第1回メフィスト賞受賞。

※『百年シリーズ』には、コミックス版も有ります。
〈コミックス版〉
原  作:森博嗣(もりひろし)
作  画:スズキユカ。

漫画家、イラストレーター。埼玉県出身。1971年〜。
アフタヌーン四季賞1993年冬のコンテスト四季賞、第6回電撃ゲーム小説大賞イラスト部門金賞受賞。

『百年シリーズ』を読むならこの順番

  1. 女王の百年密室
  2. 迷宮百年の睡魔
  3. 赤目姫の潮解

読書難易度:
『赤目姫の潮解』だけは難しく感じるかもしれません。

なお、森博嗣さんの作品は他のシリーズと何気にリンクしているので、登場人物のバックグラウンドなど詳しく知りたい方は、予備知識として『S&Mシリーズ』と『四季シリーズ』を読んでおくと良いと思います。

感想・レビュー

装丁がお洒落なので手にした本。
森博嗣さんといえば、十巻前後あるような長編シリーズが多いので、ちょっと手が出しにくかったんですよね。でもこの百年シリーズはの三冊だけ。イイね👍

幻想的な世界観と、物語の中に流れている雰囲気が本当に素敵だった✨読む人を、大人のおとぎ話の世界に連れて行ってくれるかのような物語だった。

とはいえ内容は哲学的。フィリップ・K・ディックさんの『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』および、映画『ブレードランナー』と、もの凄く親和性が高い物語だと思う。
物語を通して、フィリップさんと類似の問いかけもしていますし。
あとシリーズものということもあって、こちらの方がストーリーが長くキャラも多いので、『アンドロ羊』よりもちょっと難解。

 女王の百年密室 

『百年シリーズ』第1弾です。

旅の途中で小型飛行機で見知らぬ土地に不時着したサエバ・ミチルと、同行していた旧式のウォーカロン(ウォーク・アローン、自立型のヒューマノイド)のロイディは、森の中で孤絶した城砦都市ルナティック・シティに辿り着くところから物語が始まる。
そこは白い宮殿に住む美しい女王デボウ・スホに統治され、死というものがない楽園のような都市だった。しかしそこで祝祭の夜に若い王子が殺されてしまう。
その殺人事件をきっかけにして、完璧だったはずの都市に隠された秘密と、ミチルの過去が絡んでいく。

森博嗣さんの作品を読むのは初めてだったんですよね。そのせいかある意味インパクトがあったというか…、なんというか…、別に悪い意味ではないんだけど、普通にミステリだと思って読んだので、「えぇっ!?森博嗣さん、それでいいの?」って感じだった(まぁ、読んでみて😆)。

〈小説版〉

〈コミックス版〉

 迷宮百年の睡魔 

『百年シリーズ』第2弾です。

ミチルとウォーカロンの相棒ロイディは取材許可を得て伝説の島を訪問する。島の統治者・メグツシュカ女王は、なんと前作で会ったデボウ・スホに生き写しだった。
その島の王宮で首のない僧侶の遺体が発見され、ミチルとロイディはまたもやトラブルに巻き込まれていく。

物語の舞台は、周囲の森が一夜にして海と化したという伝説を持つ、閉ざされた迷宮の島イル・サン・ジャック。
ひょっとしてフランス西海岸のサン・マロ湾に浮かぶ小島の、モン・サン=ミッシェル修道院がモデルだろうか?

モン・サン・ミッシェル
モン・サン=ミッシェル修道院

前回よりもちょっと難解。ミステリより哲学的は話がメインだと感じた。
ミステリ要素は前作よりも控えめになり、殺人事件のトリックも重要視していない感じ。その一方でもっと哲学寄りになったと思う。 生とは何か?、人間とは何か?を問いかけているんじゃないですかね。

前作では融通のきかないロイディだったが、本作ではけっこう人間臭いキャラになった。とっても可愛い💠

〈小説版〉

〈コミックス版〉

 赤目姫の潮解 

『百年シリーズ』第3弾です。

篠芝と鮭川と赤目姫を乗せた小舟で湖を渡り、摩多井の屋敷に向かう。次第に視点と意識が混ざり、時空を行き交い、幻想的な世界へと変容していく。
ミチルが出てこない。ウォーカロンのロイディも出てこない。ロイディという名の犬なら出てくる。

潮解していく人間、人形、自分、犬、駱駝、現在、過去、未来…

こりゃー面白い👍
ぜひ頭のネジをユルユルにして読んで欲しい。
ところで前作、前々作と比べると、この本は物語と登場人物以外にも、何か違和感を感じる。
ミチルは物語の中では直接は登場していないが、ある意味ずっといるんじゃないかな。百年シリーズの主人公はずっとミチルのまま進行している、とも思った。

花の蜜を吸う蝶。青い画像。

要は『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』に荘子さんの『胡蝶の夢』と、夢野久作さんの『ドグラ・マグラ』をミックスした感じだと思うよ。

人形遊びをしているのは…
前作、前々作って実は…
時系列って実は…

色々思うことがあったんだけど、他のシリーズを読破していないので、深読みや解釈を書くのは控えようか…

〈小説版〉

〈コミックス版〉

まとめ

今回は、森博嗣さんの幻想的なSFミステリ小説『百年シリーズ』三部作の感想でした。
きっと脳と肉体の分離について考えていたんだろうね。

謎と秘密に満ち、生と死の本質に迫る、深くて壮大だった。シリーズものですが、どれか一冊だけでも十分楽しめますよ。
フィリップ・K・ディックさんの『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』や映画『ブレードランナー』がお好きな方も、きっとハマる物語だと思います。

コミックス版について

コミックス版『百年シリーズ』は、原作の幻想的で独特な世界観と、スズキユカさんの美しい絵がぴったりマッチしていてとても素敵でしたよ。
漫画版だけでも十分楽しめるけれど、少しばかりカットされたシーンがあるので、先に小説を読んでおいた方がより楽しめるんじゃないでしょうか。

他のシリーズも読むなら

なお、『百年シリーズ』に関わる他のシリーズも読んでみたい方は、『S&Mシリーズ』➔『四季シリーズ』➔『百年シリーズ』➔『Wシリーズ』➔『WWシリーズ』と読み進めるのがベストかなと思う。

〈小説版〉
Thank you!
では、またね😊


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