新聞記者でもある酒井聡平さんの『硫黄島上陸 友軍ハ地下ニ在リ』は、戦没者遺骨収集団に参加し、過去と現在の状況などをまとめた貴重なノンフィクション。
『硫黄島上陸 友軍ハ地下ニ在リ』書籍情報
タイトル:硫黄島上陸 友軍ハ地下ニ在リ
著 者:酒井聡平(さかいそうへい)
北海道新聞記者。北海道ノンフィクション集団会員。北海道出身。1976年〜。
硫黄島に計4回渡島(このうち3回は政府派遣の硫黄島遺骨収集団のボランティア)。
第11回山本美香記念国際ジャーナリスト賞を受賞。
補足1
小笠原諸島の火山列島の一つ。
島の名称は元々「いおうとう」だったが、米軍に占領された時に「いおうじま」になり、現在は「いおうとう」に戻っているそうだ。
補足2
1939年9月1日〜1945年9月2日
太平洋戦争
1941年12月7日〜1945年9月2日
硫黄島の戦い
1945年2月19日〜1945年3月26日
終戦の詔書
1945年8月14日発布、翌15日ラジオで放送
硫黄島の施政権の返還
1968年6月26日
昭和天皇在位期間
1926年12月25日〜1989年1月7日
簡単な内容紹介
新聞記者が硫黄島の戦没者遺骨収集団に参加し、あまり報道されることのない戦後の硫黄島の過去と現在の状況、遺骨収集にまつわる話を、分かりやすくまとめた貴重なノンフィクション。
読書難易度:
文章はとても読みやすい。ただ内容がヘビーなので、精神的にかなりキツイ。メンタルが安定している時に読んだ方が良いですね。
感想・レビュー
冷暖房の効いた部屋、冷蔵庫に納まっている豊富な食料、安全で豊かで清潔な暮らし。
この世に生を受け、平穏に天寿を全うできるであろう人生。
けれど幸せを満喫しているわけでもなく、生きる喜びを実感するわけでもなく、心のどこかで虚無を抱えながら過ぎてゆくありふれた日常。
天国か?戦時中に比べれば十分天国だろう。
この国を守った英霊達は、どれほどの思いで日本を守り、そのためにどれほど自分を犠牲にしてきたのだろうか。
これはただのノンフィクションじゃない。硫黄島の戦後史を知る上で貴重な記録文献でもある。
読みごたえが有るが、涙なくしては読めない。
でも日本人なら読んでおくべきだと思った。読んで知ることができて良かった。
邪推かもしれないが、ひょっとしたらジャーナリストとして興味をそそられるネタ、という気持ちが少しはあったかもしれない。
仮にそうだとしても、それ以上の良心と志と行動力と並々ならぬ熱意には、本当に頭が下がる。
書籍にして伝え残してくれた北海道新聞記者・酒井聡平さんに感謝したい。ありがとう。
硫黄島の戦いでは、日本軍兵士約2万3000人のうち戦死者は約2万2000人。だが約1万人分のご遺骨がまだ見つかっていないという。酒井さんは、1万人の遺骨が行方不明」の謎を追っている。
あと核兵器関連で「なんですと!?😱」と思うことが書かれていた。
欲を言えば
本書は2023年に発刊されている。欲を言えば戦後を知っている時代に、この世に有って欲しかった本だ。
そして誰よりもまずあの人にこそ読んでもらいたかった。
実は戦争当時、国家元首と日本軍総司令官をやっていた、やんごとなき昭和の大元帥。
結局、硫黄島にも訪れず、その身は聖性なまま、その手は綺麗なままで天寿全うされたけどね。
まとめ
国は兵士達を、明日が見えず、今日を生きれる保障も無い戦地に送りこんで、二度と故郷に戻れなくさせてしまった。
そして名前を呼んで弔われることもないままに、骨が土に還ってゆく。
戦死者達の命と名前が数字に変わってゆく。
戦争の語り部も減ってゆき、全てが遠い昔になってゆく。
時の流れは止められないけれど、忘却を見届けるしかないのだろうか?風化してほしくないな。
小さなご遺骨のカケラだけでもいい、故郷に戻ってきて欲しい。
ご遺骨はただの骨ではない。彼らが精一杯生きて、命がけで日本を守ってくれた証だ。
彼らの命のカケラであり、想いのカケラであり、魂のカケラだ。
当時はどうしようもない時代背景があったにせよ、戦禍の地にあるご遺骨をできる限り拾い集め、平和になった日本の清浄な地で弔うのが国の責任だ。
国に押し付けられた大量の都合の下で、潰したままにしないで欲しい。
なんなら硫黄島をはじめご遺骨が残る旧戦地で、かつてラジオ放送された昭和天皇による終戦の詔書を流して、時が止まってしまった戦没者の御霊に終戦を知らせてあげてくれないかな。
国のために戦いながら、終戦と平和な世の訪れを願って生命を捧げた方々だ。
当時の日本は「国民は死してなお天皇陛下に忠である」「天皇万歳」がモットーだった。現人神と信じて死後も変わらぬ忠を誓った天皇は、時が止まってしまった彼らの天皇は昭和天皇なのだ。
だから昭和天皇の声で終戦を告げるからこそ意味が有ると思うんだが…
幽霊が云々、祟りが云々と、まことしやかに噂する生者のためではなく、戦没者への慰霊として知らせてあげて欲しい(遺骨が残る各旧戦地で既に終戦の詔書を流したなら、ごめんなすって)。
たくさんの人に読んでもらいたい。
きっとこの本は、硫黄島の語り部を受け継ぐ役割を持っている一冊なのだと思う。
戦没者の御霊の安らかならんことを🙏
第二次世界大戦で激戦となった硫黄島の戦いを、クリント・イーストウッド監督が日米双方の視点から描いた映画『硫黄島2部作』です。
監督:クリント・イーストウッドさん
主演:ライアン・フィリップさん
『硫黄島2部作』の第1弾。アメリカ側からの視点で、硫黄島の戦いの真実を明かしている。
六名のアメリカ海兵隊員が、硫黄島の戦略拠点・摺鉢山の山頂に星条旗を立てる1枚の写真。
その写真は第二次世界大戦で最も有名な写真になり、その後の戦闘にも生き残った三人の兵士は、栄光と苦悩に満ちた人生を歩むことになる。
原作はノンフィクション小説『硫黄島の星条旗(原題:flags of our fathers)』。
監督:クリント・イーストウッドさん
主演:渡辺謙さん、二宮和也さん
『硫黄島2部作』の第2弾。日本側からの視点で、硫黄島の戦いの真実を明かしている。
2006年、硫黄島で、地中から数百通もの手紙が発見される。
それはかつてこの島で戦った兵士たちが家族に宛てて書き残したものだった。
こちらも実話に基づいた作品。日本兵達の家族への想いや人間関係、激しい戦いの様子が描かれている。
『栗林忠道 硫黄島からの手紙』は、硫黄島の戦いで指揮官をされていた栗林忠道さんが、家族に宛てた手紙をまとめた本。戦時中の硫黄島での状況を伝える貴重な文献です。
映画『硫黄島からの手紙』の原作本と言えるかもしれません。本書の発刊は映画完成後ですが。
『硫黄島からの父の手紙』は、硫黄島の戦いで戦死された兵士の家族宛の手紙と、そのご遺族が遺骨収容活動を行った記録が綴られています。
こちらも硫黄島の激戦の様子やご遺骨収集について記された貴重な文献です。