ドイツの作家・ミヒャエル・エンデさんの『モモ』は50年ほど前に執筆された児童文学ですが、今なお世界各国で幅広い年代層に愛読されている不朽の名作。
『モモ』書籍情報
タイトル:モモ
作 者:ミヒャエル・エンデ(Michael Ende)
児童文学作家。ドイツ出身。1929年〜1995年。
フルネームはミヒャエル・アンドレアス・ヘルムート・エンデ(Michael Andreas Helmuth Ende)。
父は画家のエドガー・エンデさん。妻は翻訳家の佐藤真理子さん。
簡単なあらすじ
街の人たちの時間が灰色の男たちに盗まれてしまうが、社会の枠組みから外れた不思議な少女、浮浪児・モモが時間を取り戻してくれる冒険ファンタジー。
読書難易度:
簡単で読みやすい名作だと思う。
なお、『モモ』は単行本やエンデ全集など複数出版されていますが、翻訳は全て大島かおりさん。
感想・レビュー・考察
50年ほど前の児童文学作品ですけど、良い話ですよね、これ👍
子供の頃に読んだのを思い出して、ふと手に取りたくなって再読。
児童文学なんですけど、社会風刺も盛り込まれ、良い意味で大人にダメージを与える物語なんですよね。
読者のターゲットを、幅広く設定した感じの絵本や児童文学って案外多いもんだね。
【POINT1】言外のメッセージ
章タイトルは二項対立的になっているものが多い。分かりやすい二項対立の狭間にモモがいいる。
そして読者に「幸福な暮らしとは?」「心の豊かさとは?」「人間らしさとは?」「時間の意味とは?」「日常が何かに侵食されていないか?」と、社会風刺も絡ませながら問いかけてくるかのような物語なんですよ。
でも本には明確な答えが書かれていない。答えに誘導はしている感じですけれど。
そのうえで「あなたも素敵な時間の花を咲かせてくださいね💠」というミヒャエル・エンデさんからの、言外の優しいメッセージまで込められている、多分。
【POINT2】読後感
読み終わった後、ふと考えてしまう。
欲や未来を人質にされたら、誰だって進んで灰色の男達に身代金を払うってもんだ。それを当たり前と思って生きてきた。
そんな生き方をしてきた自分に疑問を感じて省みる。そして「心に余裕を持とう」と思う。 そんなキッカケになる本だ。
灰色の男
誰もが象徴的なキャラなんだけど、特に灰色の男は効率化社会の闇が生みだしたモンスターのようだった。
無駄を断定し支配する、個の欠落した灰色の男達。情緒を失い時間の無い世界に侵食されていく大人達。効率化の犠牲になったのは人の心。彼らの耳には子供達の声が届かない。
これを現実の人間社会からの視点で見ると、灰色の男達が純然たる悪とも言い難い。モモが純然たる善とも言い難いし。
ホームレス又は悠々自適に暮らす裕福層ならモモのように生きれるかもしれんが、一般庶民の現実はそんなに甘くないので。
例えばリアルでは、みんな何かを背負っているし、手放したくないものだって有る。
例えば養い守るべき大切な家族がいたり、ローンが残ってたり、将来への不安があったり、仕事先がブラック企業だったり色々事情が有るってもんだ。
汗水たらして働いて自分を養い育ててくれた両親は、どれほどの時間を盗まれてしまったのだろうか? 今の自分はどうだろうか?
しかし他者からは時間を盗まれているように見えても、現実を主体的に一生懸命頑張って生きているのなら、善き人生じゃないかとも思う。
そこに僅かでも「自分らしさを楽しむ時間の余裕」があれば最高だと思う。
やっぱりバランスって大事だね。
そんなことをつらつら考えてしまった。だからといって自分の何かが変わったわけでもないんだけどね(笑)。
現代の姿無き灰色の男
インターネットの世界を覗くと、なんだか虚しさと物悲しさを感じてしまう時がないか?
ネットの中にも増殖しているんじゃない?姿なき灰色の男が。
今日も大勢の人間達がSNSでつぶやいている。
念入りな顔面工事と写真加工を施して、蝋人形を彷彿とさせるほど生の痕跡を消し、個を消した自慢の画像が並ぶ。
SNS界隈では、他者が反応した数字次第で自分の幸福や不幸が決まってしまうから、どんな時もスマホを離さない。
数字で感じる幸せには、相互フォローとか互助会みたいな煩わしいリスクがつきまとう。
虚構で得る他者承認。虚構の数字。どんどん虚構に時間が盗まれていく。
個人の自由なので私がとやかく言うことでもないけれど、そんな印象だ。
こうしてブログを書いているという意味では、私もネットに時間が盗まれているんだろうか?
そういえば昔勤めていた会社に、重症のSNS中毒の人がいたなぁ。
昼休みになると片手でパン齧りながら、もう一方の手でスマホやタブレットをひたすら弄りまくっていた。自宅ではパソコンも使っているという。
仕事中もスマホが気になって集中できず、やたら頻繁にスマホを持ってトイレに行き、なかなか帰って来ない。
でも何度注意されても聞く耳を持たないし、いつも大急ぎ・大雑把に仕事をやっつけていた。当然ミスを連発するし、「よくぞご無事で…😱」ってくらいの事故も起こした。
結局、その人はある事件を起こして新聞に載り、入社数ヶ月で解雇。SNS中毒と因果関係があったのかどうかは知らないけど、なんだかなー。
その人がスマホ片手によく言っていた。あー、時間欲しいなー。
まとめ
今回は、ミヒャエル・エンデさんの『モモ』の感想でした。
時間に追われて心に余裕のない人々を風刺しながらも、凄く哲学的、作者のメッセージ性が強い物語でした。
小学校高学年から中学生くらいのみなさんはもとより、現代社会に生きている大人も読んでみて欲しいと思う。
時間に追われて疲れている方、何となく人生に充実感の無い方、一度手に取ってみませんか?
好きな本を読んだり、
美味しいコーヒーを飲めるひとときがあるなら
それだけでも十分幸せ👍
ずっと健やかに暮らせるなら、ずっと幸せ。
あなたが心豊かな時間を過ごせますように。
『モモ』の記事は、こちらでも紹介しています。