2025年5〜6月の記事まとめ。ジャンルは文学1(日本と海外の文芸作品)、作家は恒川光太郎、上田秋成、森博嗣、フィリップ・K・ディック、ミヒャエル・エンデ(敬称略)。
【文学1】日本の文芸作品
夜市/恒川光太郎
この夏のイチオシ小説!夏といえば恒川光太郎さん!
『夜市』は、主にファンタジーなテイストのホラー小説を執筆されている人気作家・恒川光太郎さんの、デビュー作にして最高傑作と言える作品です。
書き下ろしの『風の古道』を併録しています。
どちらも和風異世界ダークファンタジーといった感じの中編小説です。
読みやすい文章、幻想的でノスタルジックな世界観、切なさと哀があるストーリーが実に良い👍
不快なシーンが無いので、ホラーが苦手な方でも楽しめると思いますよ。というか、ホラーというジャンルだけで括ってしまうのがもったいない物語なんですよ。
ジブリ作品がお好きな方にもおすすめしたい作品でした。
雨月物語/上田秋成
上田秋成さんの『雨月物語』は、湿気大国・日本の近代の怪奇幻想小説を代表する名作。9つの短編作品が収録されています。
作品の中に流れている湿度は高く、薄暗くて妖しくて情念が渦巻いていた。
日本の幽玄な世界観をベースにした、幻想怪奇を堪能できますよ。
【第一回・感想】の記事は、『雨月物語』収録作品の中から『白峯』『菊花の約』『浅茅が宿』の感想です。
『白峯』の舞台は平安時代。西行法師が崇徳院の御陵を訪ねて、魔王になってしまった崇徳院と対峙するお話。
『菊花の約』は、義兄弟の契りを結んだ二人の侍の話。
再会の約束を果たすために自害した兄が、幽霊になって弟のもとに現れる。
『浅茅が宿』は、戦乱の世が舞台。夫が帰ってくると信じて、再会できる日を夢見て心待ちにしながら亡くなった妻が、幽霊となっても家で夫を待っていてくれたお話。
【第二回・感想】の記事は、『雨月物語』収録作品の中から『夢応の鯉魚』『仏法僧』『吉備津の釜』『蛇性の婬』『貧福論』の感想です。
『夢応の鯉魚』は現実と夢とを自由に行き来できる僧侶が、夢の中で鯉になって泳ぎまわる変身譚。私は『雨月物語』収録の9作品の中で一番面白いと思った
『仏法僧』は息子と旅に出た男が、高野山の奥の院で一夜を過ごし、豊臣秀次の幽霊の御一行様と遭遇するお話。
『吉備津の釜』は、嫉妬に狂った情念剥き出しの妻が、クズな夫を祟り殺してしまう物語。
『蛇性の婬』は、イケメンに恋した蛇の化身の女が、僧に退治される物語。
『貧福論』は、金銭の精が小人の翁となって現れ、武士に金と人との関係を説く物語。
【第三回・深読み】の記事では、『雨月物語』収録作品の中から『青頭巾』について自分なりに読み解いています。
美少年にトチ狂って執着し、愛欲に乱れて鬼と化した住職を、旅の僧・快庵禅師が解脱に導く物語。カニバリズム系のホラーです。
『百年シリーズ』三部作/森博嗣
森博嗣さんの『百年シリーズ』は、ファンタジー強めの近未来SFミステリ小説です。
『百年シリーズ』は三部作になっています。とはいえ、どれか一冊だけでも十分楽しめる作品でしたよ。
『百年シリーズ』第1弾は『女王の百年密室』。
旅の途中で城砦都市ルナティック・シティに辿り着いたサエバ・ミチルと、旧式ウォーカロン(ウォーク・アローン、自立型のヒューマノイド)のロイディが、殺人事件に巻き込まれる話です。
『百年シリーズ』第2弾は『迷宮百年の睡魔』。
ミチルとウォーカロンの相棒ロイディは取材許可を得て訪れた伝説の島イル・サン・ジャック。統治者のメグツシュカ女王は、前作で会ったデボウ・スホ女王に生き写しだった。
ミチルとロイディは、再び殺人事件に巻き込まれていく。
『百年シリーズ』第3弾は『赤目姫の潮解』。
今回は、ミチルとロイディは登場しない。視点と意識が混ざり、時空を行き交い、幻想的な世界へと変容していく不思議な物語だ。
『百年シリーズ』の中で、一番難解で一番面白い作品だった。
【文学1】海外の文芸作品
アンドロイドは電気羊の夢を見るか?/ディック
『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』は、フィリップ・K・ディックさんの傑作ですね。
映画『ブレードランナー』の原作としても知られています。
核兵器を使用した第三次世界大戦後の、荒廃したサンフランシスコ。
本物の動物を飼うことが夢の見刑事リック・デッカードが、懸賞金付きの逃亡アンドロイドを処理する仕事を引き受ける物語です。
ディストピアな世界観、退廃的な雰囲気。そしてなかなか哲学的なSF小説でした。
第一回の記事では感想を、第二回〜第五回の記事では『アンドロ羊』を自分なりにガッツリ読み解いてみました。
いやぁー、長丁場だった😅
モモ/ミヒャエル・エンデ
ロングセラーになっている作品なので、ご存知の方も多いでしょう。
ドイツの作家・ミヒャエル・エンデさんの『モモ』は50年ほど前の児童文学作品ですが、現在も世界各国で、幅広い年代層に愛読されている不朽の名作ですね。
街の人々の時間が、灰色の男たちに盗まれてしまう。しかし社会の枠組みから外れた不思議な少女、浮浪児のモモが時間を取り戻してくれる冒険ファンタジーです。
簡単で読みやすい。 時間に追われて心に余裕のない人々を風刺しながらも、凄く哲学的。大人も読んでみて欲しい物語でした。