南方熊楠さんの『十二支考』は、雑誌『太陽』に連載されていた十二支の動物について書かれた「民俗学エッセイ」といったところ。ただし子(鼠)は他誌で発表したもの。丑(牛)については記述がない。
『十二支考』書籍情報
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タイトル:十二支考
作 者:南方熊楠(みなかたくまぐす)
博物学者、生物学者、民俗学者。和歌山県出身。1867年〜1941年。
知の巨人と評される天才。研究対象は粘菌、キノコ、藻、昆虫、男色、刺青、夢など、この世からあの世までの全て。
『十二支考』の簡単な内容紹介
干支の動物に関する伝説、神話、説話、民俗などの知識が、これでもかというほど詰め込まれている。なお、タイトルは『十二支考』だが、実際には丑(牛)以外の十一支。
読書難易度:
情報量は多いですが、大衆向けに書かかれたものなので、文章自体はわりと平易でした。
感想・レビュー
南方熊楠さんって守備範囲が広大で、18〜22ヶ国語を理解するほどの凄まじい記憶力だったそうですが、この本に記されている知識量も凄まじい。
よくこれだけの情報を収集・整理できたものだと思う。凄い人だ。
おまけに、どうでもいい感じのエピソードは有るし、すぐ脱線するし、ちょこちょこシモネタ入るし、ユーモアもある。ホント面白い人&面白い本だった。丑(牛)年も読みたかったな…。
南方熊楠さん
さて、南方熊楠さんをご存知の方なら、変人エピソードは聞いたことがあるでしょう。
知識を自由自在に操り、ゲロを自由自在に操り、なんなら頭突きもかます。しょっちゅう裸族になるし、人前で大股開きで股間ボリボリ掻くのも全然平気。食い意地が張っていて、大酒飲みで、癇癪持ちだったという。
シモネタも大好きで、天皇にまでシモネタ語るし、その時の様子を南方熊楠さんは、「天皇が机に両手をついて机の匂い嗅いでいた」とか言ってたとか(実は天皇は必死に笑いをこらえていたそうだ)。
粘菌標本を、キャラメルの空箱に入れて天皇に献上したのも有名だね。そんなん献上されたら逆に感激するんじゃないか?(笑)
飲酒関係でタイーホされたら、監獄で新種の菌を発見してしまったエピソードもあるね。この人絶対ただ者じゃない👍
身内にいたら困っちゃいそうな変人だけど、超博学の天才。頭もイイけど、顔もイイし、キャラもイイし、名前もカッコいいわん👍 いっそ日本の紙幣の肖像画にして、NHKの大河ドラマにして欲しいくらいだ(両方とも無理だろうな😂)。
十二支考・辰
以前、『遠野物語』の記事で地元の龍王伝説🐲について触れたんですが、日本人なら龍がお好きな方って多いんじゃないでしょうか?
『十二支考』は、どの干支の話も良かったのだけど、私も龍はわりと好きなので特に龍が面白かったし、一番読みごたえがあった。
十二支ごとに「◯に関する民族と伝説」または「◯に関する史話と伝説民俗」というタイトルで、十二支の動物に関する伝説などを紹介していく構成になっているが…。
でもなぜか辰(龍)だけはちょっと違う。タイトルも「田原藤太竜宮入りの話」になっている。
内容は、架空の龍がどのような想像によって生まれたのかについての考察。南方熊楠さんの思考に触れることができた気がして面白かったよ。
俵藤太(たわらとうた)または田原藤太こと藤原秀郷(ふじわらのひでさと)
平安時代中期の武将で、武士団を形成し「平将門の乱」を平定したと言われている。オオムカデ、百目鬼を退治した伝説も有る。伝説と史実が混在した人。
中国の龍のモデル
余談ですけど最近では、中国の龍のモデルは「ハンユスクス・シネンシス」という、かつて中国南部に棲息し、中世頃に絶滅した大型の古代ワニではないか?という説が浮上しているみたいですね。
ハンユスクス(学名:Hanyusuchus、中国語名:中華韓愈鰐)は、かつて中国南部に棲息していた大型ワニ(標本からの推定最大全長は6.2メートル)。
十二支考・巳
さて今年2025年は巳年。『十二支考』の巳(蛇)🐍も、他の干支と同様に凄まじい知識を披露されていた。
ただし感性がフリーダムなお方なので、勿論、話が脱線しまくっていた。なぜかお股周辺の話題になっちゃうんだな、熊楠さんったら(笑)。しかも知的で真面目にそれを語っていらっしゃる。どうもそっち方面を語りたくて仕方がない印象だ(笑)。
例えばカンディルの話に脱線したりしてね。
・・・うん、ビジュアル的には確かにニョロニョロ系ですけども。南方熊楠さんにツッコむのは、大変おこがましいんですけども。分かっていて、あえての脱線でしょうけども。
ソイツは蛇じゃねぇよ!ナマズの仲間だ(笑(笑(笑
ところでカンディル知ってる?
見た目はドジョウなんですが、お食事の仕方がね、寒気がするほどエグいというか、エログロ注意な奴なんですよ。おすすめはしないけど、興味が湧いたなら調べてみて。
他にも河童や邪視の話とかにも脱線してたけどね。知識の出し惜しみをせずに、何でも教えてくれる良い人だ😂
個人的には、せっかくだから邪視の話でもっと脱線して欲しかった。
まとめ
今回は、南方熊楠さんの著書『十二支考』のレビューでした。
センス・オブ・ワンダーを語る人は多いが、南方熊楠さんの場合は、ある意味、本人自身が最高にセンス・オブ・ワンダーだった(笑)。いやぁ、実に素晴らしい✨もっともっと日本人に知ってもらいたい超偉人だ。
南方熊楠さんの著書の中では、わりと読みやすい方だと思うので、入門書としてもおすすめしたい名著でしたよ。
『十二支考』の記事は、こちらでも紹介しています。