『五輪書』は、江戸時代前期の剣豪・宮本武蔵さんが人生の末期に執筆したとされる兵法書。勝負に勝つための心得やビジネス戦略・戦術、生き方などのヒントに繋がる一冊としてロングセラーになっている。
『五輪書』書籍情報
タイトル:五輪書(ごりんのしょ)
作 者:宮本武蔵(みやもとむさし)
江戸時代初期の剣術家、兵法家、芸術家。1584年(又は1582年)〜1645年。播磨国出身、肥後国死没。
二刀を用いる二天一流(円明流、武蔵流)剣法の開祖。剣豪または剣聖と称される。
本名は新免藤原玄信(しんめんふじわらのはるのぶ)又は、または宮本武蔵藤原玄信(みやもとむさしふじわらはるのぶ)
簡単な内容紹介
宮本武蔵による兵法入門といったところ。
ちなみに宮本武蔵さん自身が書き記した『五輪書』の原本は、密教の五輪(五大)になぞらえて『地之巻・水之巻・火之巻・風之巻・空之巻』の五本の巻物セットだった。原本は消失してしている。
戦術や戦略。“用兵の法”の略語。
※兵法書(へいほうしょ)とは
戦術や戦略について説いた書物。
※兵法者(へいほうしゃ)とは
剣術などの戦闘に優れた人。戦術や戦略に精通した人。
読書難易度:
現代語訳や口語訳していない原本の写し(原文)ですと、読書難易度は少し高くなる。
それよりも本書は兵法書になるので、読む人を選ぶ一冊だと思う。
感想・レビュー
日本人なら『五輪書』をご存じの方も多いでしょう。
また、宮本武蔵さん推しで、一度は読みたい♡と思っている方って結構いらっしゃるんじゃないでしょうか?
まず宮本武蔵さんといえば
一言でいうと、江戸時代を代表するストイックな剣術オタク(笑)。
もっと言うと、まだ戦国の世風が残るものの、徐々に武士達が役人化していく流れの中で、時代遅れな男になりつつあった江戸期初期の兵法者。
恐らく武勇伝については、尾びれ背びれが付いた話が殆どだと思うので、そういう意味ではよく分からないところがある人物ですな。
細川家などに厚遇されたり、60歳過ぎてから病死されているところを見ると、とりあえず生涯無敗ではあったんでしょう。
さて感想
戦い方の心構えと戦い方を説いている書。なかなか合理的な考え方をされている印象でした。格闘技をされている方なら、ためになる名著と言える一冊でしょう。
ただ、時代背景を考えると、当時は一般的な武士の実用書にはなり得なかったと思う。一部の人には指南書や資料として興味を持たれたかもしれませんが。
ぶっちゃけアナーキーな書物って感じだったかもね(笑)
私的には、未完と言われている『空之巻』が一番興味深い内容でした。あと『地之巻』の「神仏は尊ぶけど、頼りませんから」って考え方には同意!👍と思った。
私の場合は「頼らず」というより、「縋らず」と思っていますが。
残念なところを挙げると
他流派の剣術を、あーだこーだとディスるのカッコ悪いと思った。ただ己の信じる道を記すのみってスタンスで書かれた兵法書を期待していたので。
原文も読んでみた
文章量はそんなに多いわけでもないし、原文でもわりと読みやすそうな文章なので、これは他人の思考に染まっていない原文を読まなきゃもったいないね(とはいえ、謎の多い写本ですけど)。
そう思って、まず原文を先に読んでから現代語訳を補足的に読んでみたわけだが・・・
この原文が良かったんですよ👍
気取った表現や小難しい言い回しとか殆ど無いんですよ。ストレートな表現をされている。宮本武蔵さんのキャラにマッチした文体だった😂
【POINT1】『孫子』との違い
世界一有名な兵法書、孫武さんの『孫子』は、団体(国)が戦うための兵法なので、戦略的な木っ端の使い方がメイン。
一方、宮本武蔵さんの『五輪書』は、陸上で、双方の武器は刀か木刀限定で、個人戦に勝つためのサバイバル戦術って感じ。
たとえば、どちらも相手の心理に注目せよと説いているが、『孫子』は戦略的に利用するため、『五輪書』は目の前の相手を葬り、自分が生き残るため。
私は、どちらが優れているというジャッジはしないですけど、よりダイナミックで視野の広い兵法書を読みたい場合は、孫武さんの『孫子』の方が適していると思う。あとカール・フォン・クラウゼヴィッツさんの『◯争論』。ちなみにこの2冊は人類最高峰の兵法書とされている名著ですね。
【POINT2】とことんプロフェッショナル
『五輪書』では流石にオブラートに包んでいるけども、たとえばこんな主旨のことが書いてあった。
「ガチの◯し合いで、構えて待ったり、“せーのっ!”で始めたりは間違い。ルールやマナーを気にしていたら◯ぬで💀」
「勝つためなら何でもアリやで!卑怯な戦法でも全然ノープロブレム👌」
とか。
正々堂々とか役に立たんことに拘ると生き残れませんよ、ってことでしょうか?何はともあれ生きることに必死だったんでしょう。シビアな世界ね。
あと、精神面も書かれている。哲学的というか思想的というか、兵法に“自らの生きる道”も見出していた。
あまりにも「言うは易く行うは難し」な内容なので、多少己の理想像を盛り込んでいるし気がするし、それ故の矛盾も少々感じる。けど、そこを差し引いてもプロフェッショナルな兵法者の書いた本という印象でした。
まとめ
今回は宮本武蔵さんの『五輪書』のレビューでした。
兵法書なので、啓発や人生のバイブル的な本ではないし、現代の法や道徳的にNGな部分も多々有る。
でもプロフェッショナル意識を持って働くための参考として抽出できる部分も有り、現代社会で生き抜くためのヒントになりそうなことも書かれている。
特に『空之巻』はあらゆるジャンルで応用が効くし、人生そのもののヒントとして役立ちそうな話でしたよ。
人生の中の通過点として、一度は読んでみる価値は有ると思うので、もし良かったら読んでみてくださいね。
『五輪書』の記事は、全四回シリーズになっています。
第二回と第三回と第四回については、自分なりに解釈・推測・考察したものを、備忘録を兼ねて記事にしました。とはいえ私は専門家ではありません。こんな風に考える読者もいるという程度に考えてくださいませ😊
『五輪書』の記事は、こちらでも紹介しています。