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【第三回・感想と深読み】五輪書/宮本武蔵|武蔵の空と仏教の空

1.20.2025

文学2

刀が展示されている。青いの画像

【第二回・感想と深読み】五輪書/宮本武蔵|巌流島と直筆本の謎の続き。最終巻『空之巻』に一歩踏み込んで、私なりに考察・解釈してみました。こんな考え方をする読者もいるんだな程度に読んでくだされば幸い。

『空之巻』とは?

 簡単な内容紹介 

五輪書』の最終巻『空之巻』は、宮本武蔵さんなりの《空》の概念について書かれた思想的な内容である。また自分自身の人生観などにも触れている。

武蔵さんの空について、どう思う?

『空之巻』の《空》を、仏教思想の空観と同じだと言う人もいるけども、私は仏教の《空》と、宮本武蔵さんが語る《空》は、似て非なるものと思っている。

 仏教の空 

五輪書』は密教の五輪になぞらえての地・水・火・風・空の巻物5巻セットですし、仏像彫っていましたし、春山和尚との関わりもあったようですし、多少は仏教の影響を受けてはいるだろう。
しかし仏教や道教などの既存宗教からの先入観で、宮本武蔵さんの“《空》や《道》を解釈すると矛盾が生じると思う。この人は宗教の求道者じゃないので。

特徴

救われたい者が縋るのが宗教だ。そして仏教は、菩薩の道の先には我も無く、自分の存在すら無い《空》が在り、《空》の先には解脱と涅槃が在る。つまり

道徳 + 観念 + 信心 ➔ 救われる。自己実現。

ですね。そし《空》を説く時の視線は、いつだって観念にフォーカスしている。宗教ですから当然だね。
なお、全ての仏教宗派に《空》の思想が盛り込まれているわけではないけどね。

補足

仏教における空(くう、梵: śūnya [シューニャ]または梵: śūnyatā [シューニャター]、巴: suññatā [スンニャター])とは、一切法は因縁によって生じたものだから我体・本体・実体と称すべきものがなく空しい(むなしい)こと

引用:Wikipedia/空(仏教)

 武蔵さんの空 

宮本武蔵さんの語る《空》は、兵法を主軸にしているので仏教とはちょっと違うと思う。

特徴

宮本武蔵さんの《空》には、宗教から自立している者のリアリティが有る。
我も否定していないし、自分の存在も否定していない。現実的な目的を設定したうえで《空》を語り、心意云々言ってるからね。
多分、自我と自己を統合させる感じでしょう。

あと宗教は他律だから「汝、◯◯するべからず」「汝、◯◯せよ」。でも武蔵さんは自分の意志で「我は、◯◯せず」「我は、◯◯する」だから自律だよね。

そもそも宮本武蔵さんは、救われたい者、縋りたい者ではない。とことん自らの力で勝って生き残る、だ。

また、仏教は中道と慈悲をモットーとしているし、殺生NGの戒がある。
生き残るために無慈悲に人を葬りまくって、「知力も手段も総動員して、なりふり構わず葬るべし!」みたいなことも散々書いておきながら、いけしゃあしゃあと仏教の《空》を教え説くような狂人ではなかろうよ、武蔵さんは。

仏教と、己の生きる道

ちょっと話が脱線するけど
武道や武士のモラルが確立したのがいつなのか存じませんが、仏教思想を応用はできたかもしれない。っていうか、武士や武道はそうしたよね。高い精神性を有すれば仏道に転ずると。
しかし宮本武蔵さんの場合は、モラル度外視していましたから、武士道とも言い難いんじゃないでしょうか?

話を戻そう。
宗教については、とりあえず人として神仏は尊ぶし、教養や知識として仏教は学ぶし、春山和尚の話にも耳を傾ける。これが宮本武蔵さんなりの最大限のリスペクトでしょう。
でも自分には自分軸があり、兵法者としての道がある。ってことでしょう。

私的には、宮本武蔵さんを美化する気は無いが、その心意気は汲んであげたい。腹括って自ら人◯しの道を選び、自分が歩む道に誇りを持ち、その道とそんな自分を愛し、生き抜いたプロフェッショナルだった、と。

真の空とは?

《真の空》と《迷い》は同義ではないという。これは己の基点があって、そこに揺るぎ無き自分軸が立っている状態ということだね、多分。

有と無、虚と実、陰と陽、善と悪、喜びと悲しみなど相反があり、それらは表裏一体なのが、この世の理(陰陽二元論)だと知りて識る。
そしてそれら全てが見渡せる対なるものの中心、つまり敢えてどちらにも偏らないゼロポイントに己の意識の集合点(自己の基点)を置け、ってことでしょう。

ちょっと噛み砕いて説明すると、

有りて無きこの世を知りて識り、
この世の理を知りて識り、
全ての理の中心に立て。

意志は揺るがず、強く、固く、真っ直ぐであれ。
心の器は大きく、深く、しなやかであれ。

肉体の目で広く、くまなく、モノとコトの全てを見渡し、
心の眼で偏りなく、ありのままを受け止め、見極めよ。

武芸の鍛錬を怠らず、兵法の習得に励み
いかなる時も大局的な視点と、柔軟な思考で、
何事においても臨機応変に、最適な対処ができるようにせよ。

なぜならこれが兵法者にとっての真の空であるからだ。

っていう感じでしょうか。
一言でいうと、兵法者として《知》+《心・意・観・見》+《技・体》の総合力を極めた状態が宮本武蔵さんの《空》でしょう、多分。
精神世界の必殺技みたいな《空》ってワードに惑わされなければ、案外ありきたりな理想論だったりするのよね😊

しかし借り物の概念や理想論ではない。ちゃんと自分で考え自分の言葉で綴っている。 この人は伝承なども残っているので、その考えや境地に至る過程に思いを馳せることもできる。実に興味深い👍

 空の道 

上記の状態を継続すれば道になるわけだ。

全てには始まりがあり、やがてナニカに成っていく。
宮本武蔵さんも、最初から兵法者だったわけではなくて、兵法者に成りゆく道を選んだ者だったハズだ。きっとこんな感じだろう。

まず心(意志)が、兵法者としての道の始まりを作った。
 ⬇
人生のどこかの時点で、兵法を行う際の理想的な状態とはどのような状態なのか、に気付いた、というか確立した。それ以来、その状態を《真の空》と考えて、いつだって《真の空》を心がけて、極め、深め、日々精進してきた。
 ⬇
ついに自分は如何なる時も、何事においても、常に《真の空》の状態を保てるようになった(と思った)。これが《実の空》に到達した状態だと認識した。
 ⬇
ふと兵法者として己の人生を振り返ると、自分が歩んできた道が《空》そのものだったと思った。
つまり《空》が道そのものに成っていたのだ、と気付いた。
そして最後までこの道を歩み続けようと決めた。
 ⬇
こうして無敗の兵法者・宮本武蔵に成り、現在に至る。
これが我の真であり、我が道である。

多分こんな過程を経て『空之巻』に記したんでしょう。

Thank you!
〈 続 く 〉😊


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【第一回・感想】五輪書/宮本武蔵|生涯無敗だった剣豪の兵法書
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【第二回・感想と深読み】五輪書/宮本武蔵|巌流島と直筆本の謎
刀が展示されている。モノクロ
【第四回・感想と深読み】五輪書/宮本武蔵|空之巻の真意と謎

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