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【第一回・感想】サロメ/オスカー・ワイルド|世紀末文学の傑作

4.06.2025

文学1

中東の美女

19世紀の世紀末文学を代表するオスカー・ワイルドさんの『サロメ』は、新約聖書に記された話を元にした戯曲。王女サロメの狂気的な愛を描いた傑作。

『サロメ』書籍情報


カテゴリとジャンル:〈文学1〉海外の文芸作品・戯曲

タイトル:サロメ
作  者:オスカー・ワイルド(Oscar Wilde)

詩人、作家、劇作家。アイルランド出身。1854年〜1900年。
フルネームはオスカー・フィンガル・オフラハティ・ウィルス・ワイルド(Oscar Fingal O'Flahertie Wills Wilde)。
現在は複数の出版社から『サロメ』の翻訳本が出版されているが、最初に翻訳したのは森鴎外さん。


 簡単なあらすじ 

美貌の王女サロメの狂気を描いた戯曲。
サロメが、預言者ヨカナーンの生首を欲しがる話。

読書難易度:
日本語版も英語版も難しくはない。たった一夜の話なので、ストーリーは単純。

解説

今回は、坂口安吾さんの『桜の森の満開の下』の記事でも触れた、オスカー・ワイルドさんの『サロメ』の感想です。

 オスカー・ワイルドさんとは? 

19世紀の世紀末文学(退廃的な美を追求する文学、要はエログロ)を代表する作家ですね。 『サロメ』の発表当時はきっとセンセーショナルな作品と思われていたでしょうが、ご本人もキャラが濃いというか、波瀾万丈な人生だった。

オスカーさんは、16歳年下のアルフレッド・ダグラスさんという名の青年と同性愛関係にあったんだが、それがダグラスさんの父ちゃんにバレて訴訟を起こされてしまう。 オスカーさんは裁判に負けて、禁固刑2年と破産宣告の判決が下り、出所後は偽名を使って各地を転々として、46歳の時に梅毒で亡くなったそうだ。

ちなみに1997年に『オスカー・ワイルド』という題名で映画化されていますね。オスカーさん役をスティーブン・フライさん、アルフレッドさん役をジュード・ロウさんが演じているんですが、お二人とも本人にソックリでした。

 オーブリー・ビアズリーさんとは? 

『サロメ』の挿し絵を描いたイラストレーターですね。
きっと誰もが一度は目にしたことがあるペン画だと思います。雰囲気が素敵ですよね。
個人的な印象としては、とても美しい絵だけどキャラに若々しさと美しさがちょっと足りない気がして、美貌のサロメ王女って感じがしないのよね。どっちかというと、意地悪な魔法使いのオバチャンっぽい😅
ピアズリーさん推しの方、すみません💧

 『サロメ』と新約聖書 

戯曲『サロメ』の元ネタは、新約聖書『マタイによる福音書』の第三章と第十四章、『マルコに. よる福音書』第一章と第六章、『ルカによる福音書』の第三章で記述される聖ヨハネ(イエスに洗礼を授けた聖者)に関するエピソードを元にして創作されたもの。

  • 戯曲『サロメ』では、新約聖書のエピソードに色々と変更を加えている。大きな変更は 新約聖書にはサロメの名は出てこない(名も無きモブ)。
  • 戯曲『サロメ』では、義父ヘロデ王をエロド王に、母ヘロデアをエロディアスに、洗礼者ヨハネをヨカナーンに変えている。
  • 新約聖書では、母へロデア(エロディアス)の悪女っぷりが強調されているが、戯曲『サロメ』では、娘のサロメを悪女っぷりを全面に押し出している。
  • 新約聖書では、母の言いつけに従った娘が、生首が欲しいと言うのだが、戯曲『サロメ』では、サロメ自身の意志で自主的に生首を欲している。

などなど。
やっぱり母ちゃんの悪巧みよりも、銀皿に乗せた生首にキスする美貌の王女様の方が、物語の狂気的インパクトが絶大ですもんね。

 英語版について 

オスカーさんは原文を敢えてフランス語で書いたという。

かなり昔に、日本語の翻訳本を読んだことがあるんですけどね。
私は、フランス語は読めないが、英語に近いのでかなり原文に忠実に訳されているだろうと思い、今回は英語版を読んだ。

日本語訳はうろ覚えなので断言はできないんですけど、英語版はちょっとイメージが違ってたような…
誰の訳か忘れたけど、ひょっとしたら私が読んだ日本語版って意訳多めというか、翻訳者のフィルター強めだったのかもしれない。

例えば、英語版では日本語版ほどハッキリとは言ってなかった部分とかあったりしてね。なんというか、日本語版は、読者が自由に察すればいいような部分まで書いちゃってる印象だった。
あと英語版の方がもう少しカラッとした雰囲気だったよ。

短くて単純なストーリーなので、英語の難易度は高くない。趣味で英語の学習したい方にもおすすめできる一冊です。

感想・レビュー

男にトチ狂った小娘による悪夢の一夜のお話。

坂口安吾さんの『桜の森の満開の下』に似ていますが、日本の幻想怪奇もののようなネットリした暗さもないしグロさもない、という意味ではマイルドな作品でした。

 【POINT1】我儘なサロメ 

一度言い出したら聞かないサロメの会話が面白かった。

例えば、サロメがご褒美として生首を所望する際の丁寧なお願いから、イラッとした要求に変わり、そこからの

Give me the head of Jokanaan.
和訳:ヨカナーンの生首ちょーだい。

引用:サロメ(オスカー・ワイルド)

のクレクレ3連発。
一方のエロド王は、サロメに要求を撤回してもらいたくて機嫌を取るが、失敗。エグい要求なのにちょっとクスッとできるやり取りが有って、面白かった。

 【POINT2】月とサロメ 

闇夜に浮かぶ月は妖しく美しい。

月とサロメがリンクしている。 冒頭では、サロメと月が同じタイミングで描かれている。

月に、死んだ女、死者を探し求める女のイメージを連想する者もいれば、王女をイメージする者もいる。

王女サロメは、恐らく義父のせいで気分を害していたのだろうが、(死んだ女のように)青ざめて美しい。
彼女は(死者を探し求める女のように)、二人の男を死なせてしまう。

月が赤く染まる時、サロメはシリア人の血溜まりで欲に踊り、ヨカナーンに血塗られたキスをして、命を散らして自らの血に染まる。

血にまみれた美神サロメ嬢って感じで素敵ねぇ👍趣があるし、ゾクゾク感も楽しめた。

そういえばラテン語で《月》はluna(ルーナ)。
月は人を狂わせる(メンタルに影響する)と考えて、英語ではlunatic(ルナティック)=狂気の、lunacy(ルナシー)=狂気、という言葉がある。
だからオスカーさんはサロメを月の象徴としていたのかもね。

まとめ

今回はオスカー・ワイルドさんの戯曲『サロメ』の感想でした。

登場人物達は、みんなどこかしら病んでいた(笑)
月とサロメのリンクは妖しげで良かった。
「何でも望みを叶えてあげる」とか「欲しいものは何でもあげる」なんて軽々しく約束しちゃダメよ、という人生訓(え?)もあった。

美を追求するためなら背徳も厭わない、オスカーさんのデカダンスに触れたくなったら読んでみてくださいね。

Thank you!
〈 続 く 〉😊


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【第二回・深読み】サロメ/オスカー・ワイルド|王女と預言者

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